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COLUMN 学習コンテンツ
年始に立てたキャリアの計画が、春を迎えるころには手つかずのまま残っている。よくある光景です。
けれども、これは意志が弱いからとは限りません。計画を立てた時点と、それを実行する時点とでは、前提が変わっているからです。組織の方針が変わる。担当が変わる。関心のある分野そのものが移る。前提が動いたのに計画だけが固定されていれば、実行されないのはむしろ自然なことです。
第21回から前回までで、SWOT分析で自分を棚卸しし、ターゲティングで狙う市場を定め、ポジショニングで選ばれる理由を設計し、可処分時間の投資計画まで組み立ててきました。設計図はそろっています。今回は、その設計図を「動く前提」のなかで運用し続けるための思考法として、OODAループを扱います。
OODAループとは何か
空中戦の分析から生まれた
OODAループは、アメリカ空軍の戦闘機操縦士であり航空戦術家でもあったジョン・ボイド氏が考案した意思決定の方法です※1。
生まれた経緯が、この枠組みの性格をよく表しています。1950年代の朝鮮戦争で、ソ連軍のMiG-15は米軍のF-86とほぼ同等か、やや上回る性能を持っていました。それでも空中戦では米空軍が圧倒しています。当時空軍の大尉だったボイド氏はその要因を分析し、F-86は360度の視界を確保する水滴型の風防を備え、油圧制御が優れていたことに行き着きました。パイロットが敵機の状況をより広く観察でき、操縦桿の操作も容易だった。つまり、機体の速さではなく、ある状態から次の状態へ移る速さの差が勝敗を分けていたのです。ボイド氏はこれを「非対称高速遷移」と名づけ、その優位を生み出すために必要な活動を4つに整理しました※3。
情報が不完全なまま判断を迫られ、動きながら修正するしかない。この出自は覚えておく価値があります。キャリアの意思決定も、情報がそろってから動けることはめったにないからです。
4つの段階
OODAは、次の4つの段階の頭文字を並べたものです※1。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| O(Observe) | 観察する。環境と自分の状態について、事実を幅広く集める |
| O(Orient) | 状況判断する。集めた生のデータを解釈し、意味を持った情報に組み直す |
| D(Decide) | 意思決定する。次に何をするかを決める |
| A(Act) | 実行する。決めたことを行動に移す |
実行して終わりではなく、行動の結果がただちに次の観察の対象になります。線形ではなくループを描くことが、この枠組みの特徴です※1。
中心にあるのは2番目のO
4つを並べると等分に見えますが、2番目のOrient(状況判断)はループのなかで最も重要な段階だとされています※1。
理由は、この段階が判断の前提そのものをつくるからです。同じ求人票を見ても、同じ人事異動の内示を受けても、そこから読み取る意味は人によって違います。自分の経験、持っている知識、文化的な前提。それらが束になって解釈の枠をつくり、その枠を通した像に対して私たちは決定を下します。観察したデータが同じでも、Orientが違えば別の結論が出ます。
もうひとつ押さえておきたいのは、Orientがうまくいったかどうかの判定基準です。以前の自分の判断の誤りや、他者の判断の誤りに気づけたかどうかが、成功の目安とされています※1。ループは一度回して終わるものではなく、毎回の状況判断で前回の誤りに気づき、新しい仮説を立て直すことを前提に設計されているためです。
言い換えれば、Orientの質は「新しい情報をどれだけ集めたか」ではなく、「前提をどれだけ書き換えられたか」で測られます。解釈の枠が古いままなら、新しい情報も古い結論に流し込まれるだけです。
順番どおりに回すもの、ではない
なお、「観察→状況判断→意思決定→実行」と順に一周するという理解は、正確ではないとされています。理想とされるのは、Decide(決定)の段階が省略され、観察・状況判断・行動の3つがほぼ同時並行で進む状態です。ミッションが明確で、観察と状況判断が十分になされていれば、どう行動すべきかは明示的に決めなくても暗黙のうちに明らかだからです※3。
4つの箱を矢印でつないだ円い図は、あくまで説明のための簡略版だと考えておくほうが実態に合います。
PDCAとどう違うのか
出発点が違う
OODAはしばしばPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)と比較されます。両者の性格の差は、どこから始まるかに現れます。
PDCAは計画から始まります。計画と実績の差を測り、その差を埋めにいく。前提として、測るべき基準を事前に決められる程度には環境が安定していることを想定しています。もともとPDCAは工場の生産性を高めるために作られた枠組みで、決められた工程をいかに低コストで進めるかという課題に向いています※1。
OODAは観察で把握した事実から始まります。計画の編成自体が必須ではないため、計画の前提が覆っても支障なく運用できます※3。VUCA※2と呼ばれるような、変動が大きく先の読みにくい状況で持ち出されるのは、この出発点の違いによります。
両者の性格の違いは、次のように整理されています※3。
| PDCA | OODA | |
|---|---|---|
| 有効な場面 | 不確実性が低い場合 | 不確実性が高い場合 |
| 起点 | 計画 | 事実 |
| 周期 | 週次・月次・四半期など特定の周期 | 特定の周期はなく、事実を把握するつど |
| 対応のタイミング | 事前対応(事実が起きる前) | 事後対応(事実が起きた後) |
「PDCAは古い」ではない
ここで注意したいのは、OODAがPDCAの上位互換ではないという点です。両者は開発された目的が大きく異なるため、本来はどちらが優れているかを比べるものではなく、目的に沿って使い分けるべきものだとされています※1。それぞれに強みと弱みがあり、相互に補完し合う関係にあります※3。
OODAの弱点もはっきりしています。効果測定の段階を持たないため、長期的に改善や見直しを重ねていく取り組みには向きません※1。また、観察した事実だけで動いていると目先の対応に集中してしまい、中長期にわたって必要な変化への対応が遅れる恐れも指摘されています※3。
キャリアに引き寄せると、この使い分けはそのまま当てはまります。資格取得のように、到達点と評価基準がはっきりしていて環境変化の影響も受けにくいテーマは、計画を立てて進捗を測るPDCAのほうが素直です。一方、どの分野に軸足を移すか、どの人とつながりを持つかといった、正解が事前に決まらないテーマは、動きながら方向を修正するOODAが合います。
前回組み立てた時間投資の計画でいえば、学習の進捗管理はPDCA、投資テーマそのものの選び直しはOODA。この二層で見ると混乱が減ります。そして「中長期の視点が抜けやすい」という弱点への備えが、後述する長期ループにあたります。
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観察・状況判断・意思決定・実行の4段階をキャリアにどう当てはめるか、ループを速く回すコツ、周期の違う3つのループの並行運用、転職を検討する30代エンジニアの実践例、週次振り返りの習慣化まで具体的に解説します。続きはログインしてご覧ください。
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出典
※1 OODAループとは?PDCAサイクルとの違いと使い分けを紹介 — アチーブメントHRソリューションズ。考案者ジョン・ボイド氏の経歴、4段階の定義と具体例、Orientが最も重要とされる理由と成否の判定基準、OODAのメリット・デメリット、PDCAの開発目的と使い分けを解説。
※2 VUCAとは|意味や由来、象徴する事例 — 日本の人事部。VUCAの語義と由来。
※3 不確実な経営環境に対応するためのOODAループの活用 — PwC Japanグループ(2023年10月23日公開)。朝鮮戦争のF-86とMiG-15の分析および「非対称高速遷移」、順にループするという理解が誤解であること(理想はOOA)、PDCAとOODAの特徴比較表、中長期視点が欠落しやすいという留意点を収録。