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COLUMN 学習コンテンツ
前回 第15回「ビジネス資本の強化戦略(深化編)」では、ビジネス資本の「深化」戦略を扱いました。本記事では、もう一つの強化戦略である「探索(Exploration)」について解説していきます。
探索とは、新しい知識やスキルを獲得し、変化適応力(アダプタビリティ)を高めることです。深化が「今の強みをさらに強くする」アプローチであるのに対し、探索は「将来の強みの種を蒔く」アプローチだと言えます。
なぜ探索が必要なのか
環境変化への対応
探索が必要な第一の理由は、環境変化への対応です。
技術革新、業界再編、社会変化。これらの変化により、今日価値があるスキルが、明日には価値を失う可能性があります。深化だけに注力していると、環境変化に対して脆弱になってしまいます。
探索は、変化に対する「保険」として機能してくれます。複数の領域にスキルの種を蒔いておくことで、主力のスキルが陳腐化しても、別の選択肢がある状態を維持できます。
イノベーションの源泉
探索が必要な第二の理由は、イノベーションの源泉となることです。
イノベーションは、異なる知識領域の組み合わせから生まれることが多いものです。深化によって一つの領域を極めた人が、探索によって別の領域の知識を得ることで、これまでにない発想が生まれていきます。
例えば、マーケティングの専門家がデータサイエンスを学ぶことで、従来の手法では得られなかった顧客インサイトを発見できるかもしれません。
探索の方法論
両利きの読書
探索の最も手軽な方法の一つが「両利きの読書」(本連載独自の表現)です。
自分の専門領域の本(深化のための読書)に加えて、専門外の領域の本(探索のための読書)を意識的に読みます。
探索的読書のポイント:
- 精読ではなく、多読・速読でよい(概要を把握することが目的)
- 自分の専門領域と「遠い」分野を選ぶ
- 読んだ内容を自分の専門領域と関連づけて考える
探索的読書の分野例:
- ビジネス以外の学問(心理学、社会学、生物学、歴史など)
- 異業種の動向(自分の業界と全く異なる業界)
- 技術トレンド(AI、ブロックチェーンなど)
越境学習
「越境学習」とは、自分の所属する組織や専門領域を越えて学ぶことです。用語自体は中原淳が『経営学習論』※1のなかで提示し、その後、石山恒貴を中心に研究が広がってきた概念です。
越境学習の方法:
- 異業種交流会への参加
- 社外のコミュニティ・勉強会への参加
- 副業・兼業による異なる環境での経験
- ボランティア活動
- 大学院やビジネススクールでの学び直し
越境学習の価値は、「自分の常識が、他の場所では常識ではない」ことに気づける点にあります。この気づきが、自分の専門領域を相対化し、新しい発想を生み出してくれます。
筆者自身、長年研修講師として企業向けの仕事をしてきましたが、副業としてスタートアップのコミュニティに関わるようになってから、自分が当たり前だと思っていた「研修の作り方」や「合意形成のスピード感」が、業界外ではまったく通用しないことに気づかされた経験があります。最初は戸惑いましたが、この「ズレ」こそが、本業の発想を一段更新するきっかけになりました。
オンライン学習の活用
現代では、オンライン学習プラットフォームを通じて、世界中の講座にアクセスできるようになっています。
主要なプラットフォーム:
- Coursera、edX:世界のトップ大学の講座
- Udemy:実践的なスキル講座
- Schoo:日本語でのビジネス講座
オンライン学習の利点は、時間と場所の制約が少ないことです。通勤時間や隙間時間を使って、少しずつ新しい領域を学んでいくことができます。
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出典
※1 中原淳『経営学習論:人材育成を科学する』東京大学出版会、2012年(ISBN: 978-4130402705)。「越境学習」概念の代表的な日本語著作。研究の発展は法政大学・石山恒貴ゼミによる蓄積も参照。
※2 3M「15% Time」、Google「20% Time」については、各社の人事・イノベーション施策として広く知られている運用ルール。本記事の「10%ルール」は、これらを個人のキャリア戦略向けに簡略化した目安。
※3 Steve Jobs (2005). Stanford Commencement Address. 日本語訳はハングリーであれ。愚か者であれ ジョブズ氏スピーチ全訳|日本経済新聞を参照。