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COLUMN 学習コンテンツ
第2部では、キャリアを「資本」として捉え、その戦略的な蓄積と活用を解説していきます。第1部(第1回〜第13回)で導入したキャリア資本の概念を、ここからさらに実践的に深掘りしていきます。
人生100年時代においては、有形資産(金融資産、不動産など)だけでなく、無形資産の重要性が高まっています。リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットは『LIFE SHIFT』のなかで、人生100年時代を生き抜くために必要な3つの無形資産を提唱しました※1。
本記事では、これらの無形資産を増やすための「元手」となるキャリア資本の全体像を整理します。
3つの無形資産
生産性資産
生産性資産とは、所得を得るためのスキルや知識、仕事に役立つ評判やネットワークを指します。
従来のキャリアでは、生産性資産は主に「資格」や「学歴」として捉えられてきました。しかし、変化の激しい現代では、静的な資格よりも、継続的に更新される知識やスキルのほうが重要になっています。
生産性資産は、第11回「キャリア資本の考え方」で解説した「Knowing-How(方法知)」と密接に関連しています。
活力資産
活力資産とは、肉体的・精神的な健康、友人関係、愛情に満ちた家族関係など、幸福感や充実感をもたらすものを指します。
キャリアの成功を追求するあまり、健康や人間関係を犠牲にしてしまうと、長期的には生産性も低下していきます。活力資産は、持続可能なキャリアの基盤と言えるでしょう。
変身資産
変身資産とは、人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させるために必要な能力のことです。
具体的には、自分についての知識、多様性に富んだネットワーク、新しい経験に対してオープンな姿勢などが含まれます。第5回「アダプタビリティとは」で解説した変化適応力、第8回「キャリア・トランジションの全体像」から第10回「新しいスタートを切る」で扱ったトランジション対応力が、変身資産の中核に位置します。
3つのキャリア資本
これらの無形資産を増やすための「元手」として、3つのキャリア資本があります。この3分類は、田中研之輔氏が『プロティアン』※2のなかで提示したフレームワークに基づきます。
ビジネス資本
ビジネス資本とは、専門性、スキル、知識、および「稼ぐ力」を指します。
これは生産性資産を増やすための主要な資本です。具体的には、以下の要素が含まれます。
- 専門的知識・技術
- 汎用的なビジネススキル(コミュニケーション、問題解決、リーダーシップなど)
- 業界・職種特有のスキル
- 資格・認定
ビジネス資本は、Knowing-How(方法知)とKnowing-Why(動機知)に対応します。
社会関係資本
社会関係資本とは、人脈、ネットワーク、信頼関係を指します。
これは生産性資産と変身資産の両方に貢献する資本です。人脈は仕事の機会をもたらしますし(生産性資産)、多様なネットワークは新しいキャリアへの移行を支えてくれます(変身資産)。
政治学者のロバート・パットナムは、社会関係資本を「結束型」と「橋渡し型」に分類しました※3。詳しくは次々回(第17回)「社会関係資本の構造」で扱います。
社会関係資本は、Knowing-Whom(関係知)に対応します。
経済資本
経済資本とは、貯蓄、資産、金融リテラシーを指します。
一見するとキャリアとは直接関係ないように見えますが、経済資本はキャリア選択の自由を確保するために欠かせません。
経済的な余裕がなければ、不満のある仕事を続けざるを得ないこともあります。転職やキャリアチェンジのリスクも取りにくくなります。学習や自己投資に時間を割くのも難しくなるでしょう。経済資本は、プロティアン・キャリアを実践するための「心理的安全性」の基盤なのです。
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出典
※1 リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著/池村千秋 訳『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』東洋経済新報社、2016年(ISBN: 978-4492533871)。要約はGLOBIS知見録も参照。
※2 田中研之輔『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』日経BP、2019年(ISBN: 978-4296103300)。ビジネス資本/社会関係資本/経済資本の3分類は本書で提示されたフレームワーク。
※3 Putnam, R. D. (2000). *Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community*. Simon & Schuster.(邦訳:ロバート・D・パットナム 著/柴内康文 訳『孤独なボウリング 米国コミュニティの崩壊と再生』柏書房、2006年)。日本語解説はソーシャルキャピタルの考え方とは|リカレントも参照。