オモシゴキャリアの編集チームです。株式会社オモシゴが運営し、「一人ひとりが自分の能力を100%発揮し、働くことにワクワクできる世の中にする」というミッションのもと、複業やキャリアに関する情報をお届けしています。5Mix井戸端会議では、複業を実践している人たちのリアルな対話をそのまま記事にしています。うまくいった話だけでなく、迷いや失敗も含めて、これからの働き方を考えるヒントになる言葉を届けていきます。
COLUMN 学習コンテンツ
年始に「今年こそ学び直す」と決めて、二月には手が止まっている。運動も、読書も、振り返りも、始めるところまではできるのに、三週目あたりで消える。
そのたびに私たちは、自分の意志の弱さを疑います。けれども、行動の研究が示しているのはむしろ逆のことです。日々の行動の少なくない部分は、そのつどの決心ではなく、置かれた状況によって自動的に引き出されている。うまくいかないのは意志の量が足りないからではなく、状況の側が整っていないからだ、という見方です※1。
第21回から前回までで、棚卸し、狙う市場、選ばれる理由、時間の投資計画、そして回し続けるための思考法まで組み立ててきました。残っているのは、それを毎日の行動に落とす部分です。今回は、心理的成功に向けた行動を定着させる「プロティアン7つの習慣」を扱います。後半では3つの想定ケースを置いて、7つの習慣を日常のどこに差し込むかを考えます。
習慣は「意志」ではなく「状況」で動く
日常の約45%は、同じ場所で繰り返されている
日誌をつけてもらいながら日常行動を記録した調査では、学生・一般の双方の対象者で、日常行動のおよそ45%が、ほぼ毎日、同じ場所で繰り返されていました※1。記録された行動は新聞を読む、運動する、ファストフードを食べるなど、習慣としての強さもばらばらのものです。
ここで注意したいのは、この数字が「行動の45%が習慣である」と言っているわけではない点です。示されたのは「同じ場所で、ほぼ毎日、繰り返されていた」という反復の多さであり、習慣の強さそのものは行動ごとに違います。数字の意味を絞って受け取っておくと、あとの議論がぶれません。
そのうえで、習慣は次のように定義されています。過去に繰り返し行われた際の文脈(環境や直前の行動)が手がかりとなって、自動的に引き出される反応の構えである、と※1。決心が行動を呼ぶのではなく、状況が行動を呼ぶ。この順番の違いが、この回の土台になります。
意図が効くのは、習慣が弱いときだけ
もうひとつ、キャリアを考えるうえで見過ごせない知見があります。大学生の購買行動を追った研究では、習慣が弱いか中程度の人は、意図したとおりに行動していました。ところが習慣が強い人は、意図とは関係なく過去の行動を繰り返していたのです。習慣が強くなるほど、意図は行動の予測力を失っていきました※1。
つまり意図は、習慣がまだ形成されていない領域でこそ働きます。裏を返せば、すでに強い習慣ができている領域では、「今年こそ変える」という決意はあまり効きません。
知識を変えても、習慣は変わらない
行動変容の介入をまとめたメタ分析も、同じ方向を指しています。講座の受講申し込みのように、習慣になりにくい行動については、意図を変える介入が行動も変えました。一方、運動のように繰り返して習慣になりうる行動では、意図を変えても行動への効果は限定的でした※1。
情報を届けて意識を変える、という王道の手が、習慣の領域では効きにくい。キャリアの文脈でいえば、良い記事を読んで納得した翌週に何も変わっていないのは、よくある失敗ではなく、構造的に起きやすいことだと考えたほうが現実に近いはずです。
きっかけ・ルーチン・報酬
習慣の中身を扱うときに、覚えておく言葉は3つで足ります。「きっかけ」「ルーチン」「報酬」です※2。
考えが煮詰まった(きっかけ)、たばこを吸う(ルーチン)、頭がリフレッシュする(報酬)。この3つが循環し、きっかけと報酬が結びつくと、きっかけに触れただけで強い欲求が生まれるようになります。新しい習慣を身につけた人を追った研究では、帰宅直後に走る、走ったあとにビールを飲む、といった具合に、特定のきっかけと具体的な報酬を設定した人のほうが続けやすいことが分かっています※2。
ただし、ご褒美を用意すれば続くという単純な話ではありません。きっかけと報酬そのものに、新しい習慣を長続きさせる力はない、というのが数多くの研究の結論です。要は、きっかけに触れた時点で脳が報酬を「期待」するようになるかどうか※2。走り出す前から、走ったあとの感覚を欲しているところまで来ていれば、靴紐は考える前に結ばれています。
すでに染みついた習慣を変えたいときにも、この構造が使えます。きっかけと報酬は前と同じままにして、あいだのルーチンだけを差し替える※2。禁煙が難しいのは、たばこをやめようとするだけで、ニコチンへの欲求を感じたときの代わりの行為を用意していないから、という説明です。
「早起きして勉強する」が続かないとき、意志の量を増やそうとする代わりに、きっかけは何か、得ている報酬は何かを先に書き出してみる。手を入れる場所が変わります。
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心理的成功に向けた「プロティアン7つの習慣」の中身、習慣が根づく4つの条件(「いつ・どこで」の決め方、異動や転居を仕込みどきに使う方法、意志が尽きた日の設計、続けさせてくれる人の効果)に加え、異動・在宅勤務・一度に全部始めて途切れた、という3つの想定ケースで差し込み方を具体的に解説します。続きはログインしてご覧ください。
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出典
※1 Habits—A Repeat Performance — Neal, Wood & Quinn(Duke University, 2006)(Current Directions in Psychological Science, Vol.15 No.4)。日誌調査で日常行動の約45%が同じ場所でほぼ毎日繰り返されていたこと(Quinn & Wood, 2005/Wood, Quinn & Kashy, 2002)、習慣の定義(文脈手がかりによる自動的な反応の構え)、習慣が強いほど意図の予測力が下がること(Ji Song & Wood, 2006)、意図を変える介入が習慣化しうる行動には効きにくいこと(Webb & Sheeran, 2006)、文脈が変わると強い習慣が自動的に引き出されなくなること(Wood, Tam & Guerrero Witt, 2005)、文脈が変わる時期を狙う介入の提案(Verplanken & Wood, 2006)、自己制御資源が枯渇した日も習慣は維持されること(Neal & Wood, 2006)を収録。
※2 『習慣の力〔新版〕』変えるためのコツは、意外とシンプル — HONZ(峰尾健一、2019年7月19日)。チャールズ・デュヒッグ『習慣の力』の書評。きっかけ・ルーチン・報酬のループ、きっかけと報酬だけでは続かず「報酬への期待」が鍵であること、既存の習慣はルーチンのみを差し替えること、YMCAによる15万人以上のジム会員調査で継続の要因が設備ではなく交流だったことを紹介。
※3 実行率を飛躍的に高める「具体的な行動条件」設定術 — STUDY HACKER(2026年4月30日)。If-thenプランニングの説明。「いつ」「どこで」を事前に決めること、意思決定のエネルギーが節約されること、Ifには毎日確実に起こる状況を置くこと、筆者自身がIfの設定を誤って機能しなかった事例を収録。
※4 『LIFE SHIFT』3ステージ型人生の崩壊後をどう生きるか — GLOBIS知見録。リンダ・グラットン&アンドリュー・スコットによる無形資産の整理。生産性資産・活力資産・変身資産の3分類のうち、活力資産を「肉体的・精神的健康と幸福」と説明。